なぜ重曹うがいは虫歯予防に効くか
重曹うがいが虫歯予防に効果的であると言われるのには、科学的な根拠に基づいた明確な理由が存在します。その鍵を握っているのが、私たちの口の中の「酸性度(pH)」と、重曹が持つ「アルカリ性」という性質です。私たちの口の中は、通常pH六・八から七・〇程度の中性に保たれています。しかし、食事、特に砂糖を多く含むお菓子やジュース、あるいは酸性の強い炭酸飲料などを摂取すると、口の中は急速に酸性に傾きます。虫歯の原因となるミュータンス菌は、この糖をエサにして酸を作り出します。口の中のpHが五・五以下になると、歯の表面を覆っている硬いエナメル質から、カルシウムやリンといったミネラル成分が溶け出し始めます。この現象を「脱灰(だっかい)」と呼び、これが虫歯の始まりです。通常であれば、唾液の働きによって酸は中和され、溶け出したミネラルが再び歯に戻る「再石灰化」が行われるため、すぐに虫歯になるわけではありません。しかし、間食が多かったり、だらだらと甘いものを食べ続けたりすると、口の中が酸性になっている時間が長くなり、脱灰のスピードに再石灰化が追いつかなくなってしまいます。ここで活躍するのが、弱アルカリ性である重曹です。重曹を溶かした水でうがいをすると、酸性に傾いた口の中を速やかに中和し、pHを安全な領域に戻すことができます。つまり、歯が溶け出す危険な時間帯を短くすることができるのです。これは、虫歯菌の活動を直接抑制するわけではありませんが、虫歯菌が作り出した酸によるダメージを最小限に食い止めるという、非常に重要な役割を果たします。食後に重曹うがいを取り入れることは、唾液の働きを助け、歯を守るための強力なサポートとなるのです。