歯医者に関する驚きの科学

2025年7月
  • 歯科医との信頼があなたの歯を一生守る

    医療

    「この小さい虫歯、なぜ治療してくれないんだろう」。その疑問や不満は、多くの場合、歯科医師と患者さんとの間のコミュニケーションの壁から生まれます。患者さんは「虫歯=悪」と捉え、一刻も早い除去を望む。一方、歯科医師は「歯の寿命」という長期的視点から、安易な介入を避けたいと考える。この視点の違いが、すれ違いを生むのです。この壁を乗り越え、自分の歯を生涯にわたって健康に保つために、私たち患者側にできることは何でしょうか。それは、歯科医療に対する考え方を少しだけアップデートし、歯科医師との関係性を「おまかせ」から「パートナーシップ」へと変えていくことです。かつて、歯科医師は虫歯を削って詰める「修理屋」のような存在だったかもしれません。しかし現代では、口全体の健康を管理し、病気を未然に防ぎ、患者さんの生活の質を高める「健康のパートナー」へと、その役割が変化しています。この新しい関係性においては、患者さん自身も、治療の受け手であるだけでなく、自らの口の健康を守る主体者であることが求められます。歯科医師から「様子を見ましょう」と言われた時、それを「放置」と捉えるのではなく、「一緒に歯を守っていくための、最初のステップ」だと考えてみてください。そして、分からないことや不安なことは、遠慮なく質問しましょう。「なぜ削らないのですか?」「様子を見ている間に、進行してしまったらどうなりますか?」「家では何をすれば良いですか?」。あなたの疑問や不安を率直に伝えることで、歯科医師もより丁寧に説明してくれるはずです。その対話を通じて、互いの考えを理解し、信頼関係が生まれます。歯科医師は、あなたの歯を傷つけたいわけではありません。誰よりもあなたの歯を守りたいと考えている、一番の味方なのです。「治療してくれない」という不満を、歯科医への信頼に変えること。それこそが、削らず、抜かず、自分の歯で一生を過ごすための、最も確実な道筋と言えるでしょう。