歯医者に行っても、耳鼻咽喉科に行っても、特に異常はないと言われる。それなのに、片側の歯と、顎、そして喉のあたりが、常に鈍く痛む。そんな、原因不明の痛みの正体は、もしかしたら、骨や粘膜の炎症ではなく、あなたの「筋肉」が上げている、悲鳴なのかもしれません。特に、現代人に多い、ストレスや、無意識の「歯ぎしり・食いしばり」が、この筋肉由来の痛みを引き起こす、大きな原因となります。私たちの顎を動かす筋肉(咀嚼筋)は、非常に強力です。そして、日中の仕事に集中している時や、睡眠中に、知らず知らずのうちに、歯を強く食いしばったり、ギリギリとこすり合わせたりする癖があると、この咀嚼筋は、常に過剰な緊張状態に置かれ、疲弊してしまいます。筋肉が、過度に疲労すると、その中に「トリガーポイント」と呼ばれる、痛みの引き金となる、硬いしこりのようなものができることがあります。そして、このトリガーポイントを押すと、その場所だけでなく、そこから離れた、全く別の場所にまで、痛みが放散する「関連痛」という現象が起こるのです。これが、「筋筋膜性歯痛(きんきんまくせいしつう)」の正体です。例えば、頬にある「咬筋(こうきん)」という、最も強力な咀嚼筋にトリガーポイントができると、上の奥歯や、下の奥歯が、まるで虫歯のように痛むことがあります。また、こめかみにある「側頭筋(そくとうきん)」にできれば、上の歯や、眉毛のあたりに痛みが放散します。さらに、これらの筋肉の緊張は、顎や首周りの他の筋肉にも影響を及ぼし、喉の締め付けられるような感覚や、飲み込みにくさとして、感じられることもあるのです。このタイプの痛みには、いくつかの特徴があります。①朝起きた時に、特に顎がだるい、疲れている。②痛みは、ズキズキとした鋭いものではなく、重く、鈍い痛み。③日によって、痛む場所や強さが、変動する。④肩こりや、頭痛を伴うことが多い。もし、あなたの痛みが、これらの特徴に当てはまるなら、一度、歯科・口腔外科で、歯ぎしりや食いしばりの癖がないかを、相談してみてください。治療法としては、睡眠中に装着する「ナイトガード(マウスピース)」で、筋肉への負担を軽減したり、マッサージや、ストレッチ、そして、根本原因であるストレスを管理したりすることが、有効な対策となります。
筋肉の悲鳴かも?ストレスや食いしばりが招く喉と歯の痛み