それは、週末に食べた熱々のピザが原因だったのかもしれません。チーズがとろける美味しさに夢中になっていた私は、上顎を軽く火傷したことにも気づかずにいました。その二日後の月曜日の朝、口の中に違和感を覚えて鏡を見ると、上顎の真ん中あたりに小さな白いできものができていました。いつもの口内炎だろうと、その時はまだ軽く考えていたのです。しかし、その口内炎は私の想像を絶する強敵でした。場所が上顎ということもあり、何を食べるにも、何を飲むにも、その患部に直接触れてしまうのです。朝食のトーストは、まるで紙やすりでこすられているかのような痛みでした。昼食に食べたお弁当のご飯粒の一つ一つが、激痛の引き金となりました。特に辛かったのが、温かい飲み物です。大好きなコーヒーを一口飲んだ瞬間、あまりのしみる痛みに思わず声を上げてしまいました。それからは、食事の時間が苦痛でしかありませんでした。食べ物をできるだけ小さく切り、痛む場所に当たらないように、まるで知恵の輪を解くかのように慎重に口に運び、そっと飲み込む。そんな食事を続けているうちに、すっかり食欲も失せてしまいました。市販の塗り薬を試そうにも、上顎は指が届きにくく、うまく塗ることができません。スプレータイプの薬を使ってみましたが、すぐに唾液で流れてしまうような気がして、効果も限定的でした。結局、私を救ってくれたのは、時間と、食事の工夫でした。ゼリーやおかゆ、ヨーグルトなど、あまり噛まずに済む、刺激の少ないものを中心に食べるようにしたのです。そして一週間が経つ頃、あれほど私を苦しめていた痛みは、ようやく少しずつ和らぎ始めました。完全に治るまでの、あの長く感じた一週間。上顎の口内炎の恐ろしさを、私は身をもって知ったのでした。