歯茎が下がり、歯の根元が露出してしまう「歯肉退縮」。一度この状態になってしまうと、見た目が気になるだけでなく、知覚過敏や根面う蝕（歯の根元にできる虫歯）といった様々なトラブルを引き起こします。そして、最も知っておかなければならない厳しい現実は、一度下がってしまった歯茎は、特別な治療を受けない限り、二度と自然には元の高さに戻らないということです。歯肉退縮の主な原因は、加齢や歯周病、そして「歯磨きのやりすぎ」です。特に、硬い歯ブラシで毎日力を込めてゴシゴシと磨く習慣は、歯茎にとって大きな負担となります。健康な歯茎を自ら傷つけ、後退させているようなものなのです。気づいた時には、すでに歯が長くなったように見え、冷たいものがしみるようになっているかもしれません。その時点で後悔しても、失われた歯茎を取り戻すのは容易ではありません。だからこそ、何よりも「予防」が重要なのです。歯茎下がりを防ぐための最も効果的な方法は、毎日のブラッシング習慣を見直すことです。まず、歯ブラシを「やわらかめ」か「ふつう」のものに変えましょう。そして、力を入れすぎないこと。歯ブラシを握る手は、グーではなくペンを持つように軽く添えるだけです。歯に当てる力は、毛先が軽く触れる程度で十分です。力を抜けば、自然と歯ブラシの動きも丁寧になり、一本一本の歯を意識して磨くことができるようになります。また、歯と歯茎の境目を磨く際は、歯ブラシを斜め四十五度の角度で当て、優しく小刻みに動かすのがポイントです。この優しいブラッシングを毎日の習慣にすることが、あなたの歯茎を未来のダメージから守る最善の策となります。手遅れになる前に、今日からでも正しいケアを始めてください。