これまでの、炎症や筋肉が原因の痛みとは、全く質の異なる、まるで「電気が走る」「針で刺される」と表現されるような、瞬間的で、耐え難いほどの激痛が、顔の片側に、繰り返し起こる。もし、あなたがそんな痛みに悩まされているなら、それは「三叉神経痛(さんさしんけいつう)」という、神経そのものが原因の病気かもしれません。三叉神経痛は、歯の痛みと、非常によく似ているため、多くの患者さんが、最初に歯科を訪れますが、歯には全く原因が見つからない、というケースが、少なくありません。三叉神経は、脳から直接出て、顔面の感覚(触覚、痛覚、温度覚)を司る、非常に重要な神経です。おでこ、頬、そして、下顎の三つの枝に分かれており、歯や歯茎、唇、鼻、そして、喉の一部などの感覚も、この神経が支配しています。三叉神経痛は、この神経の根元が、近くを走行する血管によって圧迫されることで、神経に異常な興奮が起こり、痛みの信号が、脳に誤って送られてしまう病気だと考えられています。その痛みは、非常に特徴的です。①発作的で、持続時間は、数秒から、長くても数分。痛みのない時は、全く症状がありません。②痛みは、電撃様、あるいは、鋭く突き刺すような、耐え難いほどの激痛。③顔の片側に、限定して起こる。④洗顔、歯磨き、食事、会話、あるいは、冷たい風に当たるなど、特定の刺激が、発作の引き金(トリガー)となる「トリガーゾーン」が存在する。三叉神経の、どの枝が障害されるかによって、痛む場所は異なりますが、頬や下顎を支配する、第二枝、第三枝の領域で起こることが多く、上の歯や、下の歯が痛む、と感じるため、重度の虫歯と、勘違いされやすいのです。また、これと似た神経痛に、「舌咽神経痛(ぜついんしんけいつう)」があります。これは、舌や喉の奥の感覚を司る、舌咽神経が原因で起こり、物を飲み込んだり、あくびをしたりした時に、喉の奥や、耳の奥に、同じような電撃痛が走ります。これらの神経痛が疑われる場合、専門の診療科は、「脳神経外科」や「ペインクリニック」となります。治療は、まず、カルバマゼピンなどの、神経の異常な興奮を抑える薬による、薬物療法から開始されます。薬でコントロールできない場合は、神経ブロックや、放射線治療、そして、原因となっている血管を、神経から剥がす、外科手術が検討されます。
電気が走るような激痛!「神経痛」が原因の片側の痛み